本格ミステリ作家クラブ(編)『深夜バス78回転の問題 本格短編ベスト・セレクション』講談社文庫

ネタバレ注意。
2004年の選集。気にとまったものをいくつか。
青木知己「Y駅発深夜バス」。ちょっと狙いが露骨で分かり易すぎるきらいはあるが、提示される不可解不可思議な状況と、その陰にある即物的な事件の結び付きは爽快にキマっている。
法月綸太郎「盗まれた手紙」はパズル×パスティッシュ小説。言われてみれば「なんで思いつかなかったんだ!」ってレベルにシンプルで納得性の高い「解答」が導かれる。これだけシンプルにキマった解答であり、また法月であれば長編で読みたいところでもあるが、ネタとしてはまあどう考えても短編ネタか。知的興奮を惹起する筆の運びはさすがの上にもさすが。
石持浅海「顔のない敵」。特殊状況下での論理、これもシンプルにキマって心地いいカタルシス。ちょっとシンプルすぎる気もするが、それでもラストの処理においては案の定この作家らしい倫理的違和感により独特の読後感があって。これは素じゃなくてワザとやってそうだな…と思えたのでよかった。
評価はB−。