戸松淳矩『剣と薔薇の夏』創元推理文庫

ネタバレ注意。
1860年、日本からの使節団を迎えるニューヨークに、旧約聖書に見立てた殺人が連続する、歴史ミステリ長編。
奴隷制、南北対立が影を落とす、未だフロンティア感の残存するアメリカ。この小説で何より印象的なのは、重厚詳細に描かれる、その時代風俗描写。まずは圧倒的な量感のある歴史小説で、ミステリとしての結構は正直どうでもよくなってしまう…下巻法月解説の、「出会いそこね」というタームを中心にした論旨に頷くところはあるにせよ…という印象は否めない。
旧約聖書の見立てというプロット、真犯人のそりゃコイツしかいねーだろーな、という説得力など、ミステリとして面白い部分も確かにあるし、『名探偵は〜』のシリーズとはまったくテイストの異なる、作家の気合と沽券を見れて清々しくもありますが。
評価はC+。

剣と薔薇の夏 上 (創元推理文庫)

剣と薔薇の夏 上 (創元推理文庫)

剣と薔薇の夏 下 (創元推理文庫)

剣と薔薇の夏 下 (創元推理文庫)