川田武『五月十五日のチャップリン』光文社文庫

ネタバレ一応注意。
五・一五事件チャップリンの接近、そこでの関係者証言の食い違いという史実に、ヒトラーや黒魔術という伝奇・オカルト要素、その後のフィルモグラフィを絡めた歴史オカルトSF。
リーダビリティもあって読み易いが、「ん、結局なんだったっけ?」つー感じで物語じたいの焦点はぼやけてしまった感が拭えない。
きっと作者はチャップリン好きなんだろうし、映画がまだ娯楽の絶対的な主役の時期、そこでの大立者が歴史に抗う姿と、現代のTVマンを一方の主役として重ねて描いたのには、自身の本業への自意識と思い入れを示してもいる。「エール」とか言ってしまうと気持ち悪いけれど。
それは確かに空回っている感もあるけれど、俺に悪い印象はもたらさなかった。『独裁者』、観たくなったし。
評価はC。

五月十五日のチャップリン (光文社文庫)

五月十五日のチャップリン (光文社文庫)