花村萬月『笑う山崎』祥伝社文庫

ネタバレ一応注意。
タイトル通り、ヤクザの「山崎」を主人公にその生き様を描くピカレスク・ノヴェル。
山崎という男は、京大中退のインテリで、優男。冷酷だけどカリスマ性があって、乱脈に見えるが実は筋が通っていて、惚れた女とその血の繋がらない娘には滅法優しい、と。
そんな戯画的な人格の山崎君、でもそれを説得的に読ませてしまう筆の巧みさが、さすがの花村萬月。たとえばこれ、新堂冬樹あたりだとギャグにしかならんよね。
キャラクタたちのやりとりをほのぼのと描いてるだけでもいい小説になったと思うけど、それでもやはり過剰なヴァイオレンスを交えなければならないところに作家としての業を、細かいとこだけど山崎に「仲人をお願いします」とか言ってきた唐突な越川の行動が死亡フラグじやないところに安直の排除を感じ、好感度は高かったです。
評価はB−。

笑う山崎 (ノン・ポシェット)

笑う山崎 (ノン・ポシェット)