逢坂剛『さまよえる脳髄』新潮文庫

ネタバレ注意。
二人のサイコパスによる連続殺人に、脳科学、精神医学の知見を絡めた、文字通りの「サイコ・サスペンス」。
物語を離れてむしろ本筋はそっち、ってぐらいに脳関係の蘊蓄は豊富。これまでのこの作家の作品傾向からも十分に頷けるところではありますが、もう一方の手癖、トリック/サプライズ趣味に関しては、今回は今一つ。
蘊蓄の方に主眼がいってしまったせいか人物造形が平板で魅力に乏しく、そのせいでケレンの効果も半減してしまったような印象。「虹」にまつわるミッシング・リンクも、もっと効果的な使い方ができるように思うけれど。
評価はC。

さまよえる脳髄 (新潮文庫)

さまよえる脳髄 (新潮文庫)