サカナクション 『kikUUiki』

4th。
充実作、という言葉がぴったりの作品。前作『シンシロ』で認知を広げ、そして先行の「アルクアラウンド」でパブリックにもブレイクを果たした(一時期FMで「もういいよ」ってぐらいにかかってたよね)、サカナクション。阿ることなく、見誤ることなく、混沌と洗練がハイブリッドされた彼らのエレクトロ・ロックを、より深度を増した表現として鳴らしています。
序盤、瓢々としたシンセアレンジで聴かせる「YES NO」*1、問答無用のアンセムアルクアラウンド」*2、ピュアな詞とサビのロックとしての爆発力、そもそもパウル・クレーをネタにするセンスが心憎い「Klee」、という高揚感抜群の流れ、インストを経て後半、繊細な詞とスケール感抜群の展開がカタルシスを産むミディアムバラード「アンダー」、同時に表現される静謐と高揚、サカナクション流エレクトロ・ロックの高次元での完成形を示す「シーラカンスと僕」、ライヴの縦ノリ炸裂が容易に想像できるダンス・ロック「明日から」、いい意味で下品なギターとコーラスワークに淫靡なポップネスが咲く「表参道26時」、とここまで辿っても名曲揃い。挙げてないのはintroと「潮」だけw
でもそれ以降がまさにクライマックス。「壁」はアコギとくるり岸田みたいなボーカルで始まって、フォークチューンかと思わせながら、サビの壮大で重層的な展開はくるりもびっくりのまさにロック・オーケストラ展開だし、実質ラストの「目が明く藍色」に至ってはロック・ミュージカルだ。もう「クラブ・ミュージックとロックの融合」なんて惹句には到底収まらない、音楽集団としての溢れるイマジネーションが炸裂しています。ラストのダブ・チューンに至ってはもうおなかいっぱい。
名盤ですが、これが広く聴かれるのでしょうか…凄いことですね、それも。

kikUUiki(初回限定盤)

kikUUiki(初回限定盤)

*1:詞はこの曲が一番好き。《YES NO だけで話す人と繋がる/そっと君に尋ねるフリして僕は咳した》

*2:この曲のPVはここ数年で最大のヒット。