ねごと 『ex Negoto』

1stフル。
カロン*1のキラーチューンぶりにアルバムを買ったのですが、それ以外にも佳曲目白押しの快作です。1stでこの出来は末恐ろしい。
清冽にして鮮烈なポップ・ロックが12曲。奔放でセンスフルなギターとキーボード、サウンドのボトムを支える骨太なベースとドラム、決して巧くはないけど、人工性とエモーションの狭間で様々な表情を見せるキャッチーなボーカル。バンド・アンサンブルの構築性とソングライティングのセンス、共にハイレベルです。
冒頭の鍵盤から爽快そのものの「サイダーの海」から神秘的な世界観のダンス・ロック「ループ」、問答無用のスペーシィなキラーチューン「カロン」を経て王道ギター・ロックのスケール感を聞かせる「ビーサイド」、そして「カロン」と双璧をなすキラーチューン「メルシールー」*2へ。序盤の流れは息をもつかせぬ高揚の中にあります。
以降はアッパー系抑え気味ですが、その分多彩な音像と味わいの深い楽曲がアルバムの世界観を押し広げています。「ふわりのこと」は情感豊かな詞とメロディ、鍵盤を中心とする清明なアンサンブルが実に感動的なミディアム・バラード。

最近のきみといえば 生き物や花を育て始めた
他にすることないのと聞けば 大切なことなんだよって言った
そういうきみは素敵だったな
思い出して左目が熱い
なんだか明日も頑張ろうかなあ
優しい夜になってゆけ
(「ふわりのこと」)

特にそれまでのアッパー系の詞はファジィな世界観のものが多いので、ふとこういうこまやかなのやられるとおじさん泣いちゃいます。
「AO」のちょっといなたいフォーク・ロック風味も凄く好みで、「ガールズ・バンドによるサニーデイ・サービス」をまで求めるのはあまりに酷だと思ったり、ラスト「インストゥルメンタル」もタイトルを裏切らぬ、カタルシスに満ちたフレーズの雨霰にボーカル要らんと思ったり。
とにかく聴きどころ満載、捨て曲なしの、名刺代わりには強烈すぎる一枚となっております。

ex Negoto

ex Negoto

*1:この曲だけ、プロデュースはいしわたりの奴です。いい仕事しやがって!

*2:個人的にはサビ前の流れがよすぎてサビがかすむ。よって「カロン」に軍配。