いとうせいこう『ノーライフキング』新潮文庫

ネタバレ注意。
日本語ラップの始祖の一人に数えられる人物らしい、言葉に対する感性と細心はところどころに見られて、それは美点だと思う。
黎明期のテレビゲーム、それをめぐるこどもたちの情報ネットワークとコミュニティ、という中心的な題材に関しても、レトロさが味を出しこそすれ古びているという悪印象はない。ただ、この魅力的な題材を、どう物語として収斂、決着させるのか、その落ち着きどころが定まらないまま走ってしまった感じだった。作者もあとがきで執筆時の「憑かれた」様子を述べているように、そのスピード感を評価すべきなのかもしれないけど、俺はよりエレガントな物語を求めていたかな。こんだけ薄いときちんと畳んで欲しいと思ってしまう。
評価はC+。

ノーライフキング (新潮文庫)

ノーライフキング (新潮文庫)