馳星周『ダーク・ムーン』集英社文庫

ネタバレ一応注意。
カナダはヴァンクーヴァーを舞台に、悪徳警官だの中華マフィアでのがドンパチやる、いつもの馳ノワール
お話にも文体にも飽きがきているのは否めないが、これだけの厚さの上下巻、さほど時間を感じさせずに読ませるのは筆力だとは思う。都市におけるエスニシティ、その疎外や逸脱という題材は、さすが第一人者として充実の内容。
だけど呉達龍の唐突に感じられる子供への執着に端的なように、各人がそれぞれに抱えた妄執が、結局は「家族」なんて陳腐なものに収斂してしまうのは、なんだかベタで湿っぽくていただけなかった。
評価はC。

ダーク・ムーン(上) (集英社文庫)

ダーク・ムーン(上) (集英社文庫)