ART-SCHOOL 『Flora』

不覚にも泣いてしまったのは、ちょっと落ち込んでたからなのかしら。
少し引用してみましょうか。

くだんねぇオレだって くだんねぇ君だって
死ねないよな 何か今 そんな気がするんだ
(「Beautiful Monster」)

今が朝か夕方か そんな事も分かんないや
夜になって 酒飲んで 君の匂いを思い出して
多分きっと 初めから こんな雨は降っていた
だけど今夜一つだけ 見せたかった場所があった
(「Nowhere land」)

信じることはさぁ 裏切られるよりも
苦しいなんてねぇ 知らないでいたかった
(「影待ち」)

借り物の映像的なモチーフや露悪趣味は影を潜めて、ただぶっきらぼうにまっすぐな言葉が並んでいる。どの曲にも、涙腺を掠める力強いフレーズがある。痛々しくも確かな脈動。
メロディやリフに関しては既視感のある曲もないわけではない。それでもこのアルバムは、前作『PARADISE LOST』の路線をそのクリアでボトムの太いサウンドプロダクトの面では踏襲しながらも、明確な新機軸を打ち出したと云えるだろう。ひたすらに繊細で、露悪と空想とナルシシズムを歪んだギターにはしらせていたバンドが、初めて曲に血を通したと感じた。
木下のヴォーカルはこれまでよりずっと丁寧になった。そのせいでやや耳障りな箇所さえあるほどに。ファンクやワルツ調など洗練されたアレンジとは対照的な変遷だが、それが彼の今のモードであることには凄く納得がいく。
彼らのこれまでの作品のなかで、ロック・アルバムとしての客観的な評価は微妙だが、どれが一番自分にフィットしたかと云われれば迷わずこのアルバムになると思う。
特に「光と身体」は史上屈指の名曲。

空には青 君には孤独と痛みを
あの光は 今遠ざかって ねえ行くから
手を繋いで 手を繋いでいよう
手を繋いで 手を繋いで ねえいようぜ
(「光と身体」)

Flora(初回限定盤)(DVD付)

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