桐山襲『桐山襲全作品』作品社

ネタバレ一応注意。

全小説、評論/エッセィ/小文の集成。

「パルチザン伝説」を単著で読んだ時は、得体の知れない、いかにも過激に観念的な思想作家と思ったが、こうして全集読むことで実像が多面的に把握され、そのイメージは修正された。

「1968年」に対する落とし前、という意識はやがて沖縄戦天皇制に拡大し、それらと取っ組み合いの格闘の末、それぞれにラディカルな異形の小説として結実したわけだ。むしろ時代と主題にバチバチにぶつかり合う、肉体派の作家というイメージになった。

パルチザン伝説」*1はもとより、学生運動とその行き着く先を叙情的に描く「風のクロニクル」「スターバト・マーテル」、沖縄の歴史と現実を、時に神話的スケールも交えて描く「聖なる夜聖なる穴」「亜熱帯の涙」(怪作!)、まさかの難波作之進「神殿レプリカ」*2等々、俺の興味を惹いてやまない吸引力のある小説が揃っていた。

当然のように精力的な社会的発言も、当時の社会史料として面白く、特に「啄木と爆弾魔」における読みにはハッとさせられた。現代日本において《ぢっと掌を見》ている人の目には何が映っているんだろうね。

時代と切り結んだところに面白さのある作家で、まさにあの時代が生んだ必然という感じではあるけれど、それにしたって10年に満たない作家活動というのは刹那的に過ぎるし、もったいないよね…。R.I.P.

記録のみ。

*1:しかし小島信夫とかいう老害は恥を知った方がいい。

*2:虎ノ門事件以降、蟄居して憤死した家(廃墟)、山口の山奥に見に行きました。