桐山襲『パルチザン伝説』河出書房新社

ネタバレ注意。
新左翼関連では伝説の小説の復刊。終戦直前の混乱と、1970年代、東アジア反日武装戦線をモデルとした極左集団の革命闘争を主要な背景とし、日本で「パルチザン」たろうとした父子の「伝説」を描く。
「伝説」のままになってしまう大きな要素となった、モデルにおける「虹作戦」、大塚英志タームにおける「聖老人」に対するテロルの思想性というものに言及するほどの蓄積は自分の中になく、あくまで小説としてのインパクトを指して述べるしかないのだが。
非常に端整な文章と、時にそれを突き崩す先鋭的な表現。現実社会のダイレクトな反映と、それを侵蝕する伝奇的・神話的な物語要件。そうした相反するものが混然一体となって、戦中戦後の日本という国の異形と、それに自己を引き裂かれた人びとの姿が、確かに「伝説」としか呼びようのない凄味をもって立ち上がってくる。高橋和巳だけ読んどきゃいいかと思ってたけど、まだまだ凄い作家隠しとるやんけこの時代、『光の雨』とか読んどる場合ちゃうわw、と思いました。
しかしこの時代への理解を深めるにあたって、やっぱ戦争ってものを避けて通ることはできないんだな、掘り下げるには際限ないなーと、軽い絶望をおぼえます。
評価はB。

パルチザン伝説

パルチザン伝説