ネタバレ一応注意。
密室論と、それに基づいて書かれた短編のコレクション。
実作については、ストイックにトリックを見せることに主眼があって、しかし同時にそれを同定するロジックが捨象されている場面も多く、まあこういう読み物なんだな、と割り切って読まざるを得ない。「高天原の犯罪」とか、ストイシズムがいい方向に出た佳品ももちろんあるけど、ちょっと物足りなさを感じることもあった。
評論部に関しては、本業・数学者らしい鋭利な知性を感じられて面白い。この切れ味は実作にも通底するところだが、この本で何より一番鋭いのは、師と仰ぐ大乱歩に対する批判の舌鋒だな。あまりにも正しくてかっこよかった。
評価はC+。
- 作者:天城 一
- 発売日: 2020/07/04
- メディア: 文庫