打海文三『愛と悔恨のカーニバル』徳間文庫

ネタバレ注意。
あるガール・ミーツ・ボーイと、それに端を発した連続殺人に巻き込まれるアーバン・リサーチの探偵たちを描く長編。
だいぶ血まみれではあるけれど、紛れもなく青春恋愛小説…しかもかなり良質な。硬質ながら詩情のある文体は酔わせてくれるし、キャラクタの魅力も大いに発散されている。それらが結実したラストの一行は、ほほえましさ、かわいらしさの中に一抹のせつなさが滲む、出色の名台詞でありました。
女性陣の造形に比べて男性陣が…特にピカレスク・ロマンの中核にいる翼と藤原悠介が…見劣りしてしまうこと、また「むぎぶえ」という名付けが村上春樹的ファンタジィで若干ノイジィなこと、瑕疵と感じた部分がないわけではなかったけど、総じてはさすが打海文三と言うべき、素敵な小説でした。
評価はB。

愛と悔恨のカーニバル (徳間文庫)

愛と悔恨のカーニバル (徳間文庫)