浅暮三文『夜を買いましょう』集英社文庫

ネタバレ注意。
製薬会社の開発担当をリストラ危機にある主人公が、インドネシアで発見したキノコを元にビジネスを興す、メディカル・エコノミック・ファンタジィ。
細かい部分にまでしっかり描写設定が凝らされた、丹念な作品だけど、そうしたディテールに感興がそそられず、むしろまどろっこしく、物語からドライヴ感を喪失させるものになってしまっていた、というのが正直な読後感。終盤のファンタジックな展開も、それまでの経済シミュレーションとしての充実から突然乖離してしまったように感じられたし…。
ファンタジィとしてのケレンと、知的な実験性、考証の丹念さそれぞれが、うまくハイブリッドされていないような印象でした。
評価はC。