大塚英志『摩陀羅 天使篇 1 ロレトの連祷』電撃文庫

ネタバレ注意。

転生を繰り返す前世の記憶に結ばれた戦士たち、エスニシティが混在し新秩序の築かれたディストピアとしての東京、カルト・コミューンとそのカリスマ的な指導者の伝説、少年によるテロリズムサブカルにカブレた中学生喜ばせることにかけて人後に落ちない作家・大塚英志の面目躍如たる、まあ言ってしまえば節操の無さです。よくもまあこんだけ詰め込んだこと、とかつてカブレた三十男が思いました。

マーク・ミンスキーなんてルーシー・モノストーンのそのまんま、芸風の変わらなさは微笑ましくもありますが、もうこうしたガジェットについて一次資料も含めた消費を経過した後では、微笑ましさ、懐かしさ以上のものを感じることはなくて。

一方でガジェットを取り払ってみたところの、物語の持つ強さや、キャラクタの魅力という本筋の部分においては、空虚なものを感じてしまいます。連作の一巻だからこの先どうなるか分からないけど、この芸風の先にあるのが『サイコ』であれば…いやそっちも途中で投げてあるんだけど…推して知るべし、というところでしょう。

評価はC。