中島岳志/島薗進『愛国と信仰の構造』集英社新書

ネタバレ特になし。
「政治」と「宗教」の関わりについて、気鋭の政治学者と宗教学の泰斗が対談形式で語る内容。近現代史においてそのものズバリで関心のあった分野、論旨も明確で、非常にテンションの上がる読書でした。
帯なんかでは現政権に対するアンチテーゼが謳われていて、俺も個人的には完全にそれに与する側だけど、内容的にそれほど直截的に力点が置かれている感じではない。メディアにおける反権力はいろいろと今難しいだろうし、ラストに置かれたアジア主義を実現することの圧倒的な困難性も含め、現在の政治情勢を巡っては、快刀乱麻というわけにはいかない。《今の宗教ナショナリズムは、世襲議員や経済力のある人々が、一部の官僚や企業リーダーをはじめとするテクノクラートと一緒になって、宗教勢力を利用している結果》(253p)という島薗氏の総括が、自分が感じている違和感や薄気味の悪さを言い当ててくれてはいたけれど。あと公明党の政治姿勢についてはもっと深くやってもよかったと思うな…。
しかし歴史的な概括については抜群に面白いし、そうした総括が、現代の「美しい国」なるターム(未だに言ってんのか知らんけど)の偽善的なうすら寒さを照射しているところなど、狙いは成功しているのではないかと思います。少なくとも俺はそう受け止めました。
さて、概論を理解したところで、再び喫茶店に籠って中島氏の血盟団事件の本を読もうと思います。左翼系もそうだけど、三十過ぎて自分の中に向学心と呼び得るものを感じています…。
評価はB+。