森博嗣『詩的私的ジャック JACK THE POETICAL PRIVATE』講談社文庫

ネタバレ注意。
家庭内読書会「森博嗣完全読破」企画、第四回課題本。
『F』であれだけ鮮烈な密室破りをやって、『冷たい密室』でより端整でロジカルなものをまとめた後で、こういうアンチ密室というか、密室に淫しつつも変則的な、変奏曲的なものをやるってのは、なかなかに味わい深いものと思いました。実験棟の密室の構成要素が、描写・説明不足なところがあって、トリック自体のエッジは若干ボヤけてしまうような印象こそ否めませんが。
しかしN大祭やミステリィ研など、個人的に楽しめる(ようになった)描写が多く、初読時C+相当だった印象は上方修正されました。まあ俺の知ってるミス研はスナック貸し切ったりしなかったけど…w
その分、T大学は所在地の区名からきてるんだろうとは思いつつなぜ素直にM大学じゃないんだろう*1とか、どうでもいい(であろう)ところが気になってしかたなかったりもしましたが。でもそれも、Vシリーズの大仕掛けを鑑みれば、故のない勘繰りでもないわけで…多分なんでもないけどな。
評価はB(再読)。

詩的私的ジャック (講談社文庫)

詩的私的ジャック (講談社文庫)

*1:最有力の理由としては隣県の国立大学とカブるから。