岩井志麻子『出口のない楽園』MF文庫ダ・ヴィンチ

ネタバレ注意。
現代ものの短編集。
時代ものを離れても、色や欲や狂気や懶惰、様々に厭な味の楽しめる岩井ワールドです。
爛れて気怠い色恋模様に、ふとホラーな戦慄の走る「憂鬱なまなざし」、主婦連の階層意識といういかにも厭な題材を、自伝的要素も交えつつサラリと仕上げた「隣の淋しい女」、得意の土俗ホラーが東南アジアを舞台に、日本とは色の異なる妖花を咲かせる「檸檬と炭酸水と砂糖と暗闇」あたりが好みだったかな。
でも一番のセンテンスは、エロ幻想譚「目眩く暗い道」にあった。

僕を舐めていた舌は、ひどく純情な色をしていた。
(「目眩く暗い道」、161p)

評価はB−。