乙一『平面いぬ。』集英社文庫

ネタバレ注意。
短編集。高校生の時に読んだノベルス版は表題を変えて『石ノ目』でしたが、何一つ憶えていなかった*1ので再読。
まあ、ホラー…なんだろうけど、模索期という印象がありまして、それぞれの持ち味はてんでバラバラです。湿度のある土俗的なホラー「石ノ目」、転じて「はじめ」「BLUE」あたりはジュブナイル/寓話調、で表題作はユーモア寄りと。ホラーに軸を置きつつ、そこにどうやって色を付けるか、完成度から言えばまだ試みの段階ですね。文体も実験要素がありつつ、でもそれを考えても確かに不安定。一冊の作品集としては散漫に感じられます。
後に代名詞となる「せつなさ」のハートウォームは、確かにどの作品にも感じられますが。その意味では「ユウ」をめぐる叙述トリック*2を絡ませた表題作のそれが一番琴線に触れたかな。かわいらしさで悲惨さをくるんだ世界観も味があって、やはりこの作品がベストでしょう。
評価はC(再読)。

平面いぬ。 (集英社文庫)

平面いぬ。 (集英社文庫)

*1:当時の読書日記には一行、「文章いまいち。オチはまあまあいい味」と。偉そうw

*2:↑の「オチがいい」てのはこのことだな、きっと。