金子達仁『決戦前夜 Road to FRANCE』新潮文庫

ネタバレ特になし。
ワールドカップ1998フランス大会予選、「ジョホールバルの歓喜」までを追ったフットボール・ノンフィクション。
個人的にサッカーというスポーツを真剣に見始めたのがこの頃の代表からだったので、感慨の深い本でありました。
金子達仁という人は、TV解説こそなんかスノッブで好きになれないけど、書くもの、それはもちろんサッカーのノンフィクションが主軸であって、そして特に長いものを書かせた時には、信頼に値する筆力の書き手だと思います。本書も『28年目のハーフタイム』に負けじと読み応えがあります。
ただ、著者自身も述べているように、川口能活中田英寿にフォーカスした部分と、物語全体の流れは若干バランスを欠いているし、加茂周三浦知良に関する記述は一方的との誹りを免れないとは思う。
…でも確かに、リアルタイムで見てたら罵りたくなる気持ちもわかるし、「新旧交代」というムードはこの作品、そして「あの時代」の基調としてまったく正当なもので、中田英寿という存在はその正当性の何よりの証左ではある。
『28年目の〜』からしても、著者がアトランタ世代、代表としてフォーカスされた二人の選手に相当な思い入れがあることも分かるし、それはサッカーファンなら誰しも思い当たるところではあるだろう。俺にとっては北京世代、始めたばかりのブログに、大熊清監督と兵藤慎剛選手に対する罵詈雑言を書き連ねていたことを、今となっては懐かしく…と言うには冷めきらない苛立ちと共に思い出しますw
評価はB。

決戦前夜―Road to FRANCE (新潮文庫)

決戦前夜―Road to FRANCE (新潮文庫)