あだち充『H2 19・20(完結)』小学館文庫

完結巻。
20巻で完結というのがキレイですがそれ以上に、19巻ラストの「引き」が凄い。文庫版のために構成されたようなキマり方w
で、明和一対宇田島東戦、前の巻のレビューではあんな風に言ったのですが、なんだか普通にいい話になっていて、ある意味どんでん返しでした(三奈川くんゴメンナサイ)。準々決勝、どんどん顔が適当になっていった木根くんの見せ場にも普通に燃えてしまったし、準決勝に至っては言わずもがな。
…しかしかようにスポーツマンガとしての充実ぶりが目立ってしまって、ラブコメの要素、その決着に完全な説得力を持たせられていないように感じられてしまったのは残念。これだけの長編野球マンガ、しかも少年誌、それは必然であるのかもしれないけど、他の人ならぬあだち充であれば、この二本柱をもっと相互補完的に盛り上げることは可能であったのでは…なんて、それは残酷に過剰な期待であったわけですが。ラストも浮いてしまっているようで、やっぱ『ラフ』のラストシーンは珠玉であったなあ、と再認識(そればっか)。
これだけの長編を支えたキャラクタ陣の魅力、「あだち節」のマンガ表現としての洗練、王道野球マンガとしてのドラマ性、いずれも高次元。一流の作品であることに間違いはありません。総論的には『ラフ』ほどに熱い感想は書けませんでしたが。

H2〔小学館文庫〕 19 (小学館文庫 あI 79)

H2〔小学館文庫〕 19 (小学館文庫 あI 79)

H2〔小学館文庫〕 20 (小学館文庫 あI 80)

H2〔小学館文庫〕 20 (小学館文庫 あI 80)