栗本薫『ぼくらの気持』講談社文庫

ネタバレ注意。
発行生まれる前…でも意外と楽しく読めてしまいました。前作『ぼくらの時代』にはいい印象残ってないんだけど。デビュー作よりは腕を上げたと。
人気少女漫画家の殺人事件を、青春風味に描いたミステリ。カリカチュアしすぎの感こそあれ、少女マンガの製作現場とかコミケなんかの「ギョーカイ」も、読ませるだけの描写になっている。意外と古びてないし。またヒロインの造型も、行き着くところはバレバレだけれど、それも含めて楽しめる魅力的なものになっているね。
ただやはり、ミステリとしての堅牢さ、精緻さの欠如は減点材料だろう。ちょっと行き当たりばったりすぎる。まあ作者本人の弁でも作品のメインの志向がそこにないことは明らかだし、ミステリとしての「愉しみ」は過程では味わえるので充分と判断すべきだろう。
でもまあその分ミステリの「講義」なんかはどっちらけなんだけどね。これは古びた感もあるなあ…最近ではここに含まれない「ホワットダニット」に名作が多い気がする。
評価はB。

ぼくらの気持ち (講談社文庫 く 2-2)

ぼくらの気持ち (講談社文庫 く 2-2)