川端裕人『夏のロケット』文春文庫

ネタバレ一応注意。
高校時代の「天文部ロケット班」がひとかどの社会人として再び終結DIYでの有人ロケット打上げを目指すという「大人のメルヘン」。
非常に王道の「物語の力」を志向し、またそれを顕現している小説だし、随所に挟まれる宇宙開発史の薀蓄、科学技術的考証も、物語を引き締めている。ともすれば「オッサンの夢物語」に堕してしまいそうな題材だけに、そうしたクオリティは、ネイチャ・ライタとしての著作もある作者の面目躍如であろう。
しかし俺自身は、想定読者としてはやや若すぎるような気がしたな。やはり幼き日に「アポロ・プロジェクト」に胸をときめかせ、そして現在(つかちょっと前)は「プロジェクトX」に涙腺を緩ませていたような、そうした世代がストライクだろう。
個人的には、あまりのめりこめなかった。
評価はB−。

夏のロケット (文春文庫)

夏のロケット (文春文庫)