GRAPEVINE 『Sing』

9th。
このアルバム、非常に愛聴しております。今までバインのベスト・アルバムは『another sky』だったんだけど、これは抜いたかもしれない。
劈頭のタイトルチューン、「Sing」でスローな始まり。「マリーのサウンドトラック」を擁した『another sky』と相似で、こうした点でも俺の好みにはハマったかも。
しかしこの「Sing」、開かれた詞とビブラフォンを取り入れた浮遊感のあるアレンジで、「マリー」とは異なった世界観が、このアルバムの幕開けを彩っている。「マリー」が深海の青の「深さ」であれば、こっちはより空の「深さ」をイメージさせる。

そう 笑いあうことを
きっとわかりあうことを

空はうたい
風はうたい
ただそれを
誰がうたう
(「Sing」)

こうした開かれたイメージは、アルバムを通して感じ取れるものだ。その後の曲もまったく驚異的なソングライティングの多彩と音楽的成熟を見せ付ける名曲ぞろいで、ロックの高揚感と美メロが疾走する「Glare」や「ジュブナイル*1、相変わらず艶っぽいロックを演らせると最高の手練れっぷりを魅せる「CORE」や「鏡」、メロや詞のセンチメントの美と、粘っこいグルーヴという、本来相性の悪いはずの要素を見事に練り上げる「また始まるために」とラストの「Wants」、本当にすべての曲に濃密な「音楽性」が宿っているが、それはまったく重苦しいものではない。空の最も青い部分を吹き渡る、アホほどかぐわしい風のような濃密だ。自分で書いててもよく意味が分からん。
んで、一曲挙げろっつったら「超える」。なんだこれ、完璧すぎる。イントロのアガるリフから始まって、サビで《今限界をも超える》つった後に《そのくらい言っていいか》とか言っちゃう、ニクい自己批評を備えた詞をスケールの大きいメロディで絶頂に導き。もちろんグルーヴは極上で。間奏のアニキのギターの唸りには、なぜこのバンドがギターキッズの崇拝の対象になるような売れ方をしていないのか首を傾げるばかりです。
ということで、年間ベスト候補でした。ライヴ行こっと。身近にファンクラブに入ってる人がいるので押され気味ですが、相当好きなんですよ、バインは。

Sing

Sing

*1:《弄りあう本質と直に触る傷口と/どっちが笑えんだ》のとこ最高。詞とメロがハマりすぎ。