ネタバレ注意。
ホモとかニューハーフとか総登場、メインはAV女優の失踪事件、*1ハナから絢爛豪華なハードボイルド・オブ・セクシュアリティ。
ジェンダー、セクシュアリティの問題意識をプロットの根幹におく「3F」ハードボイルド、という基本路線は前作から引き続いているが、その行き着く先は前作より一歩進んでいる。つまり最初は全然大したことのないキャラクタに見えた捜査対象、「一色リナ」が、その捜索の過程で存在感を持ち始め、伴ってジェンダー/セクシュアリティを突き詰めた先に「母」がいる、と。
このプロットの流れは見事なものだと思ったけど、その「流れ」に意識が行きすぎて、「深さ」の点では今一歩掘り下げられなかったかな、という印象が残った。淡々とリズムのよい叙述もそれに乗っかったもののようで。
端的に言えばもっとドロドロして、凄みの欲しい題材だったかな、と。
評価はC+。
- 作者: 桐野夏生,松浦理英子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1997/06/12
- メディア: 文庫
- クリック: 32回
- この商品を含むブログ (38件) を見る
*1:厳密には「失踪」ではないのだけど。