いしいしんじ(作)/植田真(絵)『絵描きの植田さん』新潮文庫

ネタバレ一応注意。
ブ厚い紙も高品質で、つつましいながらもウェルメイドな好編。
いつも通り、美しい文章と愛らしいキャラクタ造型の相乗効果の点で右に出る者のいないいしいメルヘンの、「物語」としての完成度も素晴らしいのだけれど、ラストまで引っ張りに引っ張ってついに登場するダブルクレジット、「植田さん」の画がもう…。
順番としては逆なのだと想像するが、いしいという芸術家のイメージする世界の「美」に、これだけの説得力を持たせることに成功しているのは偉業だと思う。芸術家どうしの、相克に似たコラボレーションが現出させた、字義にラディカルな「絵本」。こういう作品こそ敬意を込めてそう呼ばれるべきだ。
だがそれだけに、表紙はちょっとストイック過ぎる気がします。もったいない。
評価はB+。

絵描きの植田さん (新潮文庫)

絵描きの植田さん (新潮文庫)