米澤穂信(編)『世界堂書店』文春文庫

ネタバレ注意。
単著かと思ったら編纂のアンソロジーだったと。
しかし「世界堂」の名に恥じない、国際色豊かな好編を揃えたアンソロジーです。特にはヘレン・マクロイ「東洋趣味(シノワズリ)」の儚げな妖美さ、レーナ・クルーン「いっぷう変わった人々」*1のハートフルさと、それだけに終わらないラストの奇妙さ、ヒュー・ウォルポール「トーランド家の長老」はブラックな可笑しさがあり、それに続くベン・ヘクト「十五人の殺人者たち」はブラックと見せかけて実はすごくヒューマンな感動が待っていて、という構成の妙、パノス・カルジネス「石の葬式」はガルシア=マルケス・ミーツ・いしいしんじ的な奇想溢れる力作で、日本代表の久生十蘭「黄泉から」も風情のあるいい小説だった。
と、堪能しました、という話。
評価はB。

世界堂書店 (文春文庫)

世界堂書店 (文春文庫)

*1:インカ、ハンノ、アンテロ、シニッカと、フィンランド風の固有名詞も素敵やん。