赤江瀑『オイディプスの刃』ハルキ文庫

ネタバレ一応注意。
「刃」と「香」。二つの「美」を融合させた、本来の意味での「耽美小説」。
読み終えてみれば、最終的に明らかになる物語の構図はたいした驚きも精緻もないが、それが解きほぐされる過程、その見せ方がとにかくうまい。前半の噎せ返るような夏の濃密と、後半の枯れた冬の寂寥の対比。「刃」と「香」が結びつく、スリリングな展開……小説技巧のなんたるかを思い知らされる。
ねちっこい文章と美意識で織り上げられた、絢爛にしていい意味で「気色の悪い」、情と美の小説。
評価はB+。

オイディプスの刃 (ハルキ文庫)

オイディプスの刃 (ハルキ文庫)