D.ブラウン/越前敏弥(訳)『ダ・ヴィンチ・コード』角川文庫

ネタバレ注意。
三冊百円也。
エンタテインメントとしての性能はやはりそれなりに高いのかな、と思う。訳者の手柄でもあろうが平易で読みやすいことこの上ない文章と、視点をめまぐるしく入れ替えての抜群のテンポ感。あるいは軽快な活劇描写と、明快な暗号、その解決。*1抑制されたキャラクタ描写と、邪魔にならない程度のロマンス。
まあこっちの方向であろうことは予期していたが、期待していないこともなかった宗教や図像学関係のペダントリィに関しては非常に物足りないものを感じた。予告編などで目にしていた映画版の黄色めでゴシックな色調はそうした重厚さを期待させないでもなかったが(まわりくどいな)、そういう「映像化」による補完を期待して、衒学を取り繕ったのかと思うと安っぽい活劇譚ではある。
上中下三冊読んで、自分の中に残るものがなにもない読書。まあそれはそれでいい。
評価はB。

ダ・ヴィンチ・コード(上) (角川文庫)

ダ・ヴィンチ・コード(上) (角川文庫)

ダ・ヴィンチ・コード(中) (角川文庫)

ダ・ヴィンチ・コード(中) (角川文庫)

ダ・ヴィンチ・コード(下) (角川文庫)

ダ・ヴィンチ・コード(下) (角川文庫)

*1:APPLE」はなかなかよかったよ。