奥崎謙三『ヤマザキ、天皇を撃て!』三一書房

ネタバレ特になし。

「"皇居パチンコ事件"陳述書」だが、ヒロヒトをパチンコで狙撃するに至るまでの過程…生い立ちや戦後の生活と殺人も述べられつつ、メインとなるのは詳細なニューギニア戦線敗走記。

臨場感たっぷりで、帝国陸軍上等兵の戦争体験の過酷さと、その過程で反天皇思想が醸成される…「神軍平等兵」が生み出される様を具に見て取ることができる。『ゆきゆきて、神軍』に描かれた、奥崎の得体の知れない迫力の源泉が理解できる、一級品の史料。

暴力性向は如何ともし難いところだし、シズミとの馴れ初めもムフフ(?)だし、人殺しといて被害者に逆ギレには唖然としてしまう(本当は苦笑)けど、やはりこれだけエクストリームな奇人ではあれ、筋が通っているようには感じてしまうんだよな。

タイトルにもなっている、パチンコ発射時に喪った戦友へ呼び掛ける場面なんてことによっては感動的なはずだけど、それは激情、万感胸に迫ってのことでなく、単にその場の戦略的な思いつきだったってのも笑え…底知れないところです。

評価はB+。