ネタバレ特になし。
女性作家らしい形のシンパシィが若干夾雑と感じられる部分もあるが、基本的にはしっかりとまとめられた評伝であると思う。歌集の見本が届いた際の中井への返答電報(189p)なんて涙なくしては読めないが、そこから若月彰の登場となるのが、なかなか人の生は映画のようにはいかないなと思う。中井との関係性だけで完結していればそれこそ芸術としての人生と期待してしまうが、そんなものは下衆のエゴイズムであって、死の床の中城にひとときであれ慰めがあったのならそれでいいんだよな…。
中井との恐ろしく芸術的な交情は、それこそ中井英夫全集でも読んで補完したいと思います。
肝心の歌、一番感銘したのはやはり代表歌でした。
冬の皺よせゐる海よ今少し生きて己れの無惨を見むか
評価はB。