皆川博子『アルモニカ・ディアボリカ』ハヤカワ文庫JA

ネタバレ注意。

『開かせていただき光栄です』に続く、18世紀イギリスを舞台とする歴史伝奇ミステリ長編。

退廃的な世界観の下、いつもの妖美な耽美性はいくぶん抑えめで、代わって多士済々のキャラクタが織り成す活劇で一気呵成に読ませる。御大の長編ではエンタメ度数の最も高い、愛すべきシリーズ、作品です。

奇想のキレ、ドラマの悲哀、勧善懲悪のカタルシス、ハッピー/バッドエンドの綯交ぜになった余韻の深さ。複雑なプロットもストンと胸に落ちてくる。物語の語り部としての圧倒的才を示す、充実の巨編。

評価はB-。