皆川博子『クロコダイル路地』講談社文庫

ネタバレ注意。

フランス革命前後の22年間、フランスとイギリスを舞台に、人々の流転と運命の交錯を描く長編歴史小説

歴史小説としての重厚さと堅牢さ、伝奇小説的な耽美性と象徴性、ホラー小説的なケレン、ミステリとしての吸引力、冒険小説的なエンタメ性。全てを兼ね備えた、圧巻の大伽藍です。皆川御大は親本刊行時で86歳…混じり気のない100%リスペクトの意味で、バケモノだと思います。

激動のフランス革命に比して後半のテンションがやや落ちたようにも感じるけど、その辺はリュシーやドブソンといったバイプレイヤがいい味出して救ってくれます。特にリュシーはいいなあ。

「あなたは、間に合ったわ」(中略)「明日だったら、私はもう青銅の像になっていたわ」
(829p)

「わたしは残る。愛している。少し憎んでいる。憎しみがこれ以上大きくならないために、残る。愛しているわ、ピエール」
(1008p)

口を開けば名台詞。忘れ難く魅力的なキャラクタでした。

評価はB。

クロコダイル路地 (講談社文庫)

クロコダイル路地 (講談社文庫)