佐藤亜紀『バルタザールの遍歴』文春文庫

ネタバレ注意。

1918年、ウィーンの貴族の家に、一つの身体に二つの魂を共有して生まれた双子、バルタザールとメルヒオール。彼らが辿る、激動と退廃のヨーロッパ(および北アフリカ)行を描く、歴史ファンタジィ長編。

勝手にシャム双生児の話だと思ってたのもあって、もっと伝奇ゴシックな感じを予想して身構えてたら、実際はいくぶんライトに狂ってた。クセはあるけど、歴史小説として稠密さもあるし、そこに独自の奇想と世界観をしっかり絡ませて、新人離れした筆力を見せつけたデビュー作。

しかし個人的には、このテンションで物語を運ぶなら、ストーリィやキャラクタにもっとケレンとドライヴ感が欲しいと思ってしまったな…前述のような先入観が覆された反動もあって。

評価はC+。

バルタザールの遍歴 (文春文庫)

バルタザールの遍歴 (文春文庫)