島田荘司『星籠の海』講談社文庫

ネタバレ注意。

瀬戸内を舞台に、ある島に流れ着く死体の謎が、やがて村上水軍の歴史も絡んだ壮大な展開を見せる、御手洗潔シリーズの長編。

…とは梗概まとめてみましたが、内実はその粗雑さだけが印象に残る残念作でした。瀬戸内海の干潮を利用したトリック、歴史ミステリ的展開、カルトを題材にしたサスペンス、いずれも構想のスケールを裏切って安っぽく、島荘の力技を堪能する以前に尻すぼんでしまう。

そして一番不満なのが、安っぽい陰謀論(…さもありなん、だよまったく)を振りかざしながら、ひたすら独善的に振る舞う御手洗と、最序盤のクソほどどうでもいい女性ファンとの交流以外でまったくの「無」である石岡の存在…僕たちが愛した御手洗ものの愉しさはここになく、いっそパスティッシュでもあれば救われたのだけど。

老いたミソジニストの、里心による空虚な伽藍。居住地ネタだからまだ読めたけどな。

評価はC。