伊吹亜門『刀と傘 明治京洛推理帖』東京創元社ミステリ・フロンティア

ネタバレ注意。

慶応三年~明治六年の京都を舞台に、江藤新平とその部下鹿野師光がいくつかの殺人事件に遭遇する連作短編集。

いや、評判通りの傑作でありました。江藤新平という大立物を据えて、大政奉還佐賀の乱まで、日本近代化の怒涛を描く歴史時代小説として読み応えがあり、またミステリとしては各編、フーダニットに密室トリック、倒叙とそれぞれ異なる趣向を凝らし、その中で江藤と鹿野のホームズ/ワトソンの関係性の位相が変化していく、おそろしく巧緻な企みを秘めた連作。

各々の短編にもうひとクオリティあるか、「罪には罰を」が連作の中で深化していたら間違いなくAだったかなーと思う。述べたように様々な読みどころがあるが、やはり江藤と鹿野のバディものとしての存在感…言うなれば明治版『ロング・グッドバイ』…は出色。しかし師光かっこええよな。名古屋弁キャラを初めてかっこええと思った。

評価はB+。