古処誠二『いくさの底』角川文庫

ネタバレ注意。

太平洋戦争初期のビルマ戦線、現地人の村に駐屯する日本軍部隊に起きる連続殺人を描く長編。

非常にシンプルで、納得性の高いトリックだったが、それをこれだけストイックに、夾雑を排してまとめた心意気がかっこいい。戦記小説としても力点があるならなおさら、いろいろ視点替えたり、戦闘描写いれたり膨らませて、さらなる効果を狙いそうなもんだけど、この作品は逆をやって、あくまで短く端的に事件にフォーカスして、それがトリックを研ぎ澄ませている。

戦記小説としても、その悲劇のあっけなさ、ドラマ性の薄さが逆説的に戦争というものを照射しているようにも感じられる。ウダウダと無駄に言葉を連ねない、オトコマエな作品でした。

評価はB。

いくさの底 (角川文庫)

いくさの底 (角川文庫)