古処誠二『接近』新潮文庫

ネタバレ注意。
太平洋戦争末期、沖縄戦を舞台に、ある「接近」を描く戦記小説。
文庫180pと短く、叙述も短いセンテンスを積み重ねた、ストイックな小説表現。いまいち整理できなかったプロットも、解きほぐしてみたらシンプルなものだろう。
しかし個人的に文章との相性の悪さが如何ともし難く、ストイックなはずの小説の世界観が、酷く迂遠にもったいぶって、結果とっ散らかったものとして感じられてしまった。描かれる地獄の情景や、表現されるべき主題も、だから胸に迫ってくるものではなかった。
力が入れば入るほど空回る。本格畑での代表作『フラグメント』でもそうだったから、ジャンルを問わずこの作家の作品は、俺にとってはそういうものなんだろう。
評価はC。

接近 (新潮文庫)

接近 (新潮文庫)