ネタバレ注意。
舞城版百物語。初出のtwitterもフォローしてました。
おなじみ福井県西暁町と東京都調布市が舞台となっていて、土着的なホラーと都市怪談がそれぞれの風合いを愉しめます。もちろんベースとなるのは舞城節のイキのいい言文一致体で、口語怪談に独特のキャラクタを付けて、食い合わせのよさを感じさせる表現になっています。
文体という点では、「地獄の子」では凄く寒気のする恐ろしさを醸せているし、「穴の蓋」「買ってない品物」なんかでは〆のユーモアに味わいが深いし、「駐車場の私の車」ではせつなさに貢献している。《ド田舎に住む利点って結局のところは適当にエロ本が捨ててあるってことに尽きるんじゃないかと思う。》(「エロ本小屋」)とか唐突にアホみたいなこと言ってて笑えるし。
怪談としての完成度という意味では、「入口」では「横内さん」や「空の大王」といったところ、後者の自分がコントロールできなくなる感覚、他社との断絶の感覚ってのは、「出口」の「恋するクーラー」あたりとも通底していて、連作の恐怖感覚のキモとなってもいるけど、単純に怖い。「出口」では他に「空き家の草取り」も新鮮で面白いし、「女の城」の暴力的(?)な除霊も最高でした。
総じて、多彩なイマジネーションと語り口の相乗を愉しめる、怪談文学の新機軸です。
評価はB−。
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