池井戸潤『銀行総務特命』講談社文庫

ネタバレ注意。
銀行内の不祥事を調査する特命調査行員、指宿修平を主人公とするシリーズ。
主に唐木ってヒロインを中心に連作の進行軸があって…ラスト「ペイオフの罠」に至ってはほとんど主人公の座を奪取していて…、連作長編と言える恰好ではあるのだけど、背表紙に短編の一文字もないのは、それだけで売上変わるんだろうなーという要らぬ勘繰り。
それぞれの短編、リーダビリティは充分に高いけど、プロットにおいては若干作り込みの甘さを感じさせもする。そして全体的にハードでドライな路線、銀行って組織がいかに人を歪ませていくか、救いのない悲劇としてしか読めないという点でもちょっと辛いところ。特に「遅延稟議」なんかには見の竦む思いがします。
勧善懲悪がもっと前面に立ってカタルシスくれたら読後感も違うんだろうけどな…それが見られたのは「特命対特命」ぐらいだったかな。
評価はＣ＋。

新装版 銀行総務特命 (講談社文庫)

読んだのは旧版でしたが。