『ユリイカ 2006年8月号 特集・古川日出男』青土社

ネタバレ一応注意。
10年前のムックを今頃になって。
古川日出男特集、『聖家族』直前ぐらいの時期で、ちょうどこの頃を境に俺のフルカワ歴も止まってるのだけど、『アラビア』や『ベルカ』、『サウンドトラック』のアツい記憶がよみがえって、一応買って揃えてある文庫作品、また読みたくなりました。
インタヴューや対談(with吉増剛三)は、かなり抽象的な創作論が多くて、芸術家としての気概を感じさせます。

「貴賤」のないもの同士が繋がっていく、広がっていく、広がっていこうとするその力だけを認めたいという僕の姿勢が根本にあります。
(対談、74p)

俺は人間中心主義が本当にいやで、そういう動物とかを幸せにしたい。
(インタヴュー、168p)

その他様々な寄稿者による論考は、トヨサキ女史のお家芸、選評dis*1に笑ったり、「境界領域文学」と書いて「スリップストリーム」と読む、というクールなタームを巽孝之に教えられたりと愉しいのもあったけど、読むに堪えない独善的な論考(?)もあって、しかしそれはああ文芸評論ってこういうのだったよなーと奇妙な懐かしさの中にありもして。
しかし広告頁、今は亡き新風舎自費出版詩集の、箸にも棒にも掛からないようなポジティブ・メッセージが氾濫していて、なかなか鮮烈にアイロニカルな味わいのある誌面構成だった。古川目当てにユリイカ買って、こんなクソみたいな詩集に気惹かれる人いないと思う…完全に広告費の無駄、そりゃ潰れるわ。
評価はC+。

ユリイカ2006年8月号 特集=古川日出男 雑種の文学

ユリイカ2006年8月号 特集=古川日出男 雑種の文学

*1:今回の標的は平岩弓枝。まさに笑止。