貫井徳郎『愚行録』創元推理文庫

ネタバレ注意。
ある一家鏖殺事件の被害者家族の実像を、それに関わった人々の証言集の形で浮彫にした長編。
傍から見たら幸せな家族の完璧な夫婦も、一皮剥いてみたらこんなんでしたよ、というブラックな味わいの作品。狭いママ友コミュニティでのドロドロした自尊心の葛藤とか、某有名私大における俄かには信じ難い「格差」の有様とか、男女間での色恋と利害の絡んだ修羅/愁嘆場とか、人間の醜い卑小さをまざまざと描き出す筆はリーダビリティたっぷり。ニヤニヤしながら厭な気持ちで、あっという間に読み終えてしまいました。
ある独白と犯人像との絡み、そこで描かれる悲劇性はちょっと浮いてるように感じたけど、それによってタイトルがダブル・ミーニング的に深みを持ってくるあたりは巧いなあと思った。
評価はB。

愚行録 (創元推理文庫)

愚行録 (創元推理文庫)