Cocco 『プランC』

8thフル。
新作の度にどんどん自由度が増すCoccoのアルバムですが、タイトルからしオルタナティヴ、プランAがダメでもあんなこともこんなこともやれるぜ、って表明された今作、もはや原型をとどめていませんw
劈頭、「パンダにバナナ」からエロトランスって新しい地平が切り開かれていて、次の「ドロリーナ・ジルゼ」は複雑怪奇なアレンジがドラマティックな仕上がりの怪名曲。血と肉を媒介にした女の情念はもう箍が外れた爆発ぶりで引用しようがありません。
エログランジもかわいげのある小曲もあって、また「BEAUTIFUL DAYS」のような王道も、「Snowing」のように美しいバラードもあって楽曲は多彩。古今取り混ぜてダンス・ミュージックに接近しているのはバレエというルーツや最近の舞台などでの活動を思えば自然なことで、そうした肉体性も彼女の表現が「健全」を得ているように思われてなんだかホッとしてしまいます。
そんな感じで、自由でハジけていて、風通しのいい好盤です。「ハミングバードと星の砂」というとても美しい曲が、個人的なウェディング・プレゼントだって話も、この作品の幸福感を象徴しているようで。その後「スティンガーZ」のはっちゃけぶりもまた。《ある種 完璧 ロリータバディ/よくぞここまで凹んだ!》ってw
そしてラスト「コスモロジー」における、ピアノだけをバックに響くヴォーカルの充実度は目を見張るものがあって。詞の世界観にある《海の底》のイメージを、ヴォーカルの深みで体現するさすがの表現。
こうして自由で、健全な作品を目の前にしても、ナチュラル・ボーン・アーティストな彼女の近況を予断できないのはもう長く聴いてるから十分知ってもいるんだけど。健康第一でまたいい音楽を産み落としていただきたいと思う次第。

プランC(通常盤)

プランC(通常盤)