篠田真由美『祝福の園の殺人』講談社文庫

ネタバレ注意。
前作に続き、中世(近世?)ヨーロッパを舞台にしたミステリ。今回の舞台は多層構造の豪奢な庭園。
庭園とそれをめぐる人々の因縁と愛憎、そうしたメイン部分の書き込みはさすがの粘着質で、こういうゴシックな雰囲気づくりは巧いと思う。しかし両輪となるべき庭園に関するミステリとしてのプロット構築が、言葉遊びのレベルにとどまってしまったのは残念。一応物理的な仕掛けはあるが、もっと大掛かりな物理トリックが仕掛けられてたら面白かったのに、というないものねだり。
探偵役の正体の思わせぶりな感じも、自慰的であまりよい印象は持てません。
評価はB−。