幡大介『猫間地獄のわらべ歌』講談社文庫

ネタバレ注意。
『2013本格ミステリ・ベスト10』で話題だった時代本格ミステリ
ある藩の江戸屋敷と国許に連続して起こる「殺人」を描く。
まず目につくのは矢継ぎ早に繰り出されるトリックと、人を食ったようなユーモラスでメタフィクショナルな展開。凡百の時代小説とも、凡庸な本格とも、確かに異なって独特の世界観が構築されている。
各々のトリックに特段のカタルシスはないが、そうした目くらましの中に、ある叙述トリックによるサプライズが仕掛けられていて、そのミスディレクションの有効性は確かにこの世界観ならではのもの。(そこそこ)売れっ子の時代小説作家が、こんだけマニアックな作品をわざわざものするだけのことはあると思った。
評価はC+。

猫間地獄のわらべ歌 (講談社文庫)

猫間地獄のわらべ歌 (講談社文庫)