斎藤肇『思いがけないアンコール』講談社文庫

ネタバレ注意。
「思い」シリーズ第二作。
第一作『思い通りにエンドマーク』は、中学生の時分、まさに「新本格」との馴れ初めの頃に読んでいて、名探偵・陣内先輩のキャラクタと共に割といい印象が残っていました。なので懐かしさと共に期待のあった読書だったのです…が。
しかしこの作品は、あまりにあからさまな失敗作だなあと思う。舞台立ても、機械/物理トリックも、プロット上のサプライズや、黒幕にまつわるアレコレも…すべてが壮大に空回り*1していて、文章もリズムは悪くないのに、ところどころ変な描写が目について落ち着かない。
野心的な試みではあるし、ここまで空回ってくれると爽快感さえあるけれど、新本格黎明期において、それが叩かれた要素のみを抽出してブン回したような小説であるなーと。
客観的にはD評価だけど、作品の根幹にあるスピリットと、併禄ショートショートのメイントリックの、バカバカしくも鮮やかな切れ味に+を進呈。
評価はD+。

*1:「回転」がキモの作品だけに。