ヒキタクニオ『消し屋A』文春文庫

ネタバレ特になし。
前読んだのがつまらなかったので期待してなかったんだけど、この小説はなかなか面白かったです。
いかにも絵空事のキャラクタばっかり出てくるんだけど、そいつらが皆立ってて面白い。オカマもチンピラも博徒もドヤ街の住人たちも、皆いきいきとそれぞれの物語を生きている。「消し屋」の主人公・幸三の造形も、そうした様々な物語を貫いて、存在感と魅力を発揮している。
プロ野球があまり好きじゃない僕としてはメイン・ストーリィがどうでもよかったのですが、「人」を読むということに関してエンタテインメント性の高い作品。セリフも粋でイキがいいです。

「前の学校の先生と親はどんな町だとか、どんなことに気をつけろとか言わなかったのか?」
「うん、博多は魚がおいしい町だって……」
「それは随分と人間を舐めてるか、ただの阿呆のセンコーと親だな。おまえだって嫌だと思うぜ。知らねえ奴がいきなり自分の家に、『魚うまいんだってね』なんて能天気なこと言いながら入ってきたら」
(52p)

評価はB。

消し屋A (文春文庫)

消し屋A (文春文庫)