the band apart 『Scent of August』

5th。
いつも通りの、「かっこよさにおいて隙のないアルバム」的な感想に落ち着いてしまうかと思っていました。前作『Atze of penguin』における「I love you Wasted Junks & Greens」ぐらいに飛び抜けて圧倒的なキラー・チューンこそないけれど、粒揃い*1で、スキットまで隙なくかっこいい、最高傑作と言える出来では。バンアパ聴いてるとチャリでもバイクでも車でも、なんでも走りたくなるし、「BGMにいい」というのは彼らの音楽に関してだけは褒め言葉なのでは、なんて。

幹線道路に沿って 僕は夜を通り抜ける
スクランブル交差点 たくさんの車とスクーター
不眠症 僕は夜を通り抜ける
薬を飲むなんて そんな事はしないさ
(「Taipei」訳詞)

…てなことを、漫然とカーステ*2で聴きながら思っていたのですが、帰ってじっくり聴いてみたら。
…これ、詞いいね。

僕たちがこの街で出会ってから ずいぶん長い時間が過ぎた
街の景色の中 光が眩しい そして僕は一人きりでその道を歩く
嘘をつかずに自由でいられる奴なんていないさ
いま僕に残ったものは クレジット・カードに何本かの鍵
数枚の硬貨と いかれた物語
それと君の写真
(「photograph」訳詞)

珍しくセンチだったりしつつ、でも根本では「自由」を希求する力強い詞世界が、これまでの作品より強固な世界観を構築しているように思いました。「自由」というのは、彼らの音楽には一番相応しい言葉だよね。実は一番体現するのが難しい概念だと思うけど、フルアルバム五枚というキャリアを経たここに至ってなお「自由」な、バンアパのロックの真髄を堪能できる一枚です。

歩き続けよう
カラスが街の上を飛び回って 夜明けの訪れを告げる
ゴミ収集車が通り過ぎていく
僕は 舗道に転がって 正しくありたいと願っている石だ
(「WHITE」訳詞)

Scent of August

Scent of August

*1:「photograph」の詞曲の絡み、「light in the city」の眩しいサウンドスケープ、「Taipei」と続く「bind」のオフビートかつ偏執的な転調のかっこよさ、「Rays of Gravity」の疾走感…後半に至っては全曲がハイライト。ベストは「WHITE」かな。

*2:営業車にデッキがついたのです。