高村薫『神の火』新潮文庫

ネタバレ注意。
そして罵詈雑言注意。
久々にクソ小説を読みました。不快です。
まず文章が生硬でまどろっこしい、非常に厭なベタつきを感じて不快だった。こういうのは「重厚」とか「硬質」とか絶対言わないと思う。
社会派ハードボイルドぶったストーリィも、登場人物たちの「思い」、ストーリィを推進するモチベーションの部分にまったく説得力がなくて空疎。ナルシスティックな破滅願望以上のものに思えない。作者がそれに酔いながら書いてるのが伝わってきてたまらなく不快。

 己の死さえ人ごとのように傍観しかねない自分という人間の少々異様な精神、自分という人間を含めて世界そのものに距離を置くその在り方に、根本的な問題があることを島田は常に知っていた。子供のころから、それとなく分かっていたぐらいだ。しかし、なぜだか分からないが、この良も似たようなところがあるにもかかわらず、良は少なくとも、明日も分からない人生を生き延びることで、それなりに刻々と命を感じさせる。ほんの一日足らず一緒にいただけで、いやというほど伝わってきた一つの命に触発されて、島田は今、余計な思案をし始めたのだった。この俺に明日はあるのか、明日にどういう意味があるのか、と。
(上巻222p)

…しゃらくせえw どうでもいいよもう。
キャラクタ造形の根幹にどうしてもボーイズラヴに近似した感性があって、ドラマ作りがそのファンタジィに立脚していること、その病の根は深いと思うが、エピゴーネンである五條瑛も含め、それがファンのいる理由でもあるんだろうな。
一番気持ち悪かったのは、日野とかいうガテン系ヤクザのキャラ(理系インテリである主人公の幼馴染属性)。目玉がどうこう言ってる時点でたまらないものがあったけど、クライマックスでのオナニー(そのものズバリのマスターベーション)シーンとか、小説を読んでて久々に底深い虚無感をおぼえました。
いくらディテール積み上げたって、それで小説が成立するとは思えない。
評価はD。

神の火〈上〉 (新潮文庫)

神の火〈上〉 (新潮文庫)

神の火(下) (新潮文庫)

神の火(下) (新潮文庫)